M2の髙橋弥生さんの研究で、日本の日本海側地域に固有のスミレであるスミレサイシン Viola vaginata の葉緑体ゲノムを解読した論文が、Mitochondrial DNA Part B誌に掲載されました。
Yayoi Takahashi, Masato Fujiwara, Masaaki Ozeki, Masayuki Saito, Takaya Iwasaki*. 2024. The complete chloroplast genome of Viola vaginata (Violaceae), an endemic species of the snowy region in Japan. Mitochondrial DNA Part B 10:47–51 https://doi.org/10.1080/23802359.2024.2444595
本研究で対象としたスミレサイシンは、核ITS領域を用いた系統解析結果に基づいてスミレ属の分類体系を整理したMarcusen et al. (2022)では、Section Plagisstigma内のSubsection Stolonosaeに含められています。近年、葉緑体ゲノム配列を用いた系統解析が様々な種で行われていますが、Subsection Stolonosaeに含まれるスミレでの解析はまだ行われておらず、今回のスミレサイシンが初めての報告となります。解読した葉緑体ゲノム配列に近縁種の配列を加えてアラインメントし、分子系統解析を行ったところ、スミレサイシンはsubsection Bilobataeのツボスミレ V. verecundaやタチスミレ Viola raddeana、subsection PatellaresのV. mongolicaやV. yunnanfuensisなどとクレードを形成しました。他のsubsection Patellaresは別のクレードを形成しており、これらの結果は核ITS領域を用いた系統解析結果を元に提唱されていた分類体系と大きく異なります。今後、多くの種についてさらに葉緑体ゲノムの解読を進めていくとともに、多数の核遺伝子を用いた系統解析を行うことも、スミレ属の進化史を明らかにするためには重要であると思われます。