M2の毛利陽香さんの研究で、日本固有種のシロバナタンポポ Taraxacum albidum の葉緑体ゲノムを解読した論文が、Mitochondrial DNA Part B誌に掲載されました。
Haruka Mouri, Mizuki Tatsumi, Takako Nishino, Takeshi Suzuki, Tatsuyoshi Morita, Motomi Ito, Takaya Iwasaki (2024) The complete chloroplast genome of Taraxacum albidum (Asteraceae), a Japanese endemic dandelion. Mitochondrial DNA Part B 9:1015–1019 https://doi.org/10.1080/23802359.2024.2387258
シロバナタンポポの葉緑体ゲノム配列を近縁な他のタンポポ属植物と比較したところ、韓国と九州北部に分布するモウコタンポポ Taraxacum mongolicum と99.99%同じであり、わずか1か所の塩基置換しか違いがないことが分かりました。先行研究であるMorita et al. (2021)では、アロザイム解析の結果から、5倍体のシロバナタンポポは、九州の一部にだけ分布する4倍体のシロバナタンポポと、他の2倍体種の交雑によってできた雑種起源種であることが推測されています。今回のシロバナタンポポは東京のお茶の水女子大学構内(グラウンド奥)に生育している個体を解析しており、倍数性解析はしていませんが、その分布パターンから5倍体と思われます。モウコタンポポが3倍体であることから、5倍体シロバナタンポポの直接の母系は4倍体シロバナタンポポであり、その4倍体シロバナタンポポの母種がモウコタンポポである可能性が高いと思われます。
ただし、現時点ではまだ日本周辺のタンポポ属植物を網羅できていないため、より近縁な種が存在する可能性も考えられます。また、父系の系統がどうなっているのかについてはまだ分かっていません。
(今後について)
この研究は毛利さんが卒業研究の際に最初に解析した結果をまとめたものです。現在、毛利さんはさらに研究を進め、多くの種の葉緑体ゲノム、核リボソーム配列を用いた系統解析研究をまとめつつあります。そちらでは、「解きがたき謎」ともされる様々なタンポポ属植物の起源について、分岐年代や母系・父系まで含めた複雑な網状進化の歴史が明らかにできる見込みです。続編の論文もできるだけ早く出版できるように頑張ります。