分子遺伝学
担当時間:3学期 木曜日 10:40-12:20
分子生物学の進歩は目覚しく、われわれの生命現象に対する理解を大きく変えてきた。「DNAが生命の鋳型」という概念も、「動く遺伝子」として知られるトランスポゾンや、RNAによる遺伝子発現調節、またDNAの塩基配列に因らない遺伝など、様々な現象の発見により覆されつつある。こうした分子生物学の「今日」に焦点を当て、近年の研究を英語で理解できるようになることを目標とする。教科書(Lewin’s GENES XII)だけでなく、近年の最先端の研究の総説をグループで読み解く活動を通して、得られた知識を総合したディスカッションする能力や発表スキルも身に着けてほしい。
概念を記憶することではなく、コミュニケーションを図ることによりアイディアを作り上げることを大事にしてもらいたい。毎回、英語の課題がある。他学年、他学科、大学院生、他大学生の聴講を歓迎する。このクラスを通して、枠組みを超えた学生同士の交流も図りたい。また、将来の自分のキャリアについて考える機会としてほしい。
分子遺伝学実習
担当時間:4月第2週から第4週 13:20-17:00
次世代シークエンサーの活用が広まることにより、生命科学における研究は、大量のデータを数学的に解析するという傾向にある。特定の生き物が好きで生物学科に入学してきた学生にとっては残念なことに思えるかも知れないが、こうした解析を使いこなすことは、生物の外見からは分からない生命現象の謎を解き明かすことに欠かせなくなってきているし、働き方の多様性を必要とする女性の生き方にも必要となってくるのではないだろうか。近年では、解析に必要なソフトウェアはほとんどが公開されており、自分でスクリプトを書くことなく解析を進めることができる。しかし、こうした解析方法の進化は非常に目覚しく、このような解析を使いこなすには、やり方を覚える、というのではなく、英語で発表されている情報を自分で蒐集し、うまくいかないときのトラブルシューティングも自分でできるようになるということが肝である。本実習では、このような解析の入門として、次世代シークエンサーによるデータをゲノムにマッピングし、母方ゲノム由来の遺伝子発現を同定する。さらにその結果を、PCR法を用いて実際に確認する。
この実習で習う内容も、あっという間に古くなるだろう。大事なことは、この実習を通して、英語でも怖気づくことなく自分で情報収集し、新しい技術を採り入れていくという姿勢を身につけることである。実習テキストにやるべきことが全て書いてある実習ではなく、逆に、自分でやり方を見つけていくという進取の精神で臨んでほしい。
外書講読
担当時間: 後期 10:40-12:10
英語の論文を読み解き、科学批判が出来るようになることを目指す。嶌田先生と共同で担当。
環境発生進化学 (大学院博士課程前期向け)
担当時間: 後期 木曜日 午後
地球環境変動に伴い、環境が生物に及ぼす影響についての研究の重要性が高まっている。ダーウィン自身も、環境が生物のバリエーションの創出に与える影響について注目しており、その後の科学者によって、例えばStandfussやGoldschmidtが提唱したphenocopy, Conrad Hal WaddingtonのGenetic assimilationやMary Jane West-EberhardのPhenotypic accommodationなど、様々な概念が提唱されてきた。しかし、未だ直接的証拠が少なく、Extended Evolutionary Synthesisという、進化生物学を二分する、近年の大きな議論をよんでいる。環境が発生や進化に及ぼす影響について、歴史的な知見を踏まえたうえで、エピジェネティクスや体細胞-生殖細胞間コミュニケーションなどについての現在の研究技術用いて、どのように歴史的課題を解決できるかについて話し合う。環境発生進化学における最新の研究に触れ、現在の進化論における問題点や、進化における新たな考え方を自ら構築できるようになることを目標とする。
環境発生進化学演習 (大学院博士課程前期向け)
担当時間: 後期 水曜日 15:00~16:30
環境が生物の発生や進化に及ぼす影響についての研究は、分子生物学、発生生物学、進化生物学およびシステム生物学にまたがる異分野融合の研究となっている。一見複雑な解析であっても、生物学的な知見に照らした解釈が出来るようになることを目標に、環境が発生や進化に及ぼす影響に関する最新の分子生物学的研究の論文を読み解き、手法について理解するとともに、結果の解釈について、科学的な批判ができるようになることを目標とする。
先端動物学 (大学院博士課程後期向け)
担当時間: 後期 日時は10月ごろ掲示
生命科学研究は、マウスや線虫、ショウジョウバエといった一部の動物種を利用した研究によって、飛躍的に発展した。しかし、動物界には、約35動物門、100万種を超える生物が知られており、果たしてモデル動物の研究だけで、どこまで地球上の動物について知ることが出来ただろうか。「Anything found to be true of E. coli is also be true of elephant」というJacques Monodが残した有名な言葉があるが、大腸菌の情報で象のなりたちがどれだけわかっただろうか?これまでヒトに最も近いモデルのひとつとして多用されてきたマウスですら、同じ哺乳類であるヒトに応用できない場合が多いことが、近年の研究で明らかになりつつある。また、モデル動物の多くは、研究室内の同一環境内で長年飼育されてきた生物を使用しており、発生パターンが特殊である場合が多い。モデル動物だけでは解決されなかった「盲点」となる科学的疑問が、まだ多く残されている。モデル動物では解決できない問題に、動物学的知見を駆使してどのように取り組むことが出来るか。このような研究に対し、地球上の100万種を超える動物の中から最適なモデルを選び、モデル動物では解決できなかった難問に挑もうとする動物学者を養成するのが、本講義の目的である。動物学的にユニークな研究例を学びながら、動物学的センスを磨いてもらいたい。
動物学応用演習 (大学院博士課程後期向け)
担当時間: 後期 日時は10月ごろ掲示
生命科学研究は、様々な動物種を利用した研究によって、飛躍的に発展した。しかし、動物の生活環や発生、生殖方法など、動物によって様々であり、これらの特性が、研究における限界につながっていることがしばしばである。約35動物門、100万種を超える動物界における生物をどう活かすか。非モデル動物の研究は、ゲノムシーケンスなど、リソースの貧困から研究の進展が遅かったが、近年のシーケンス技術やゲノム編集技術の発展により、非モデル動物を使った研究も飛躍的な進展が期待される。このような流れの先端をゆく若手研究者養成のため、非モデル動物を使ったユニークな研究例を学ぶことにより、動物学的なセンスを磨くことを目的とする。
生物学特殊講義 IV (後期集中、2018年度休講)
「英語で生命科学を議論しよう」
英語で科学における議論の仕方や、議論することによって周りの人たちと新しい考え方を生み出すという科学の面白さを学ぼうとする学生のための講義。科学哲学で有名なカール・ポッパーは、「科学は問題を解くために発展し続けるシステムである」という言葉を残した。科学は研究の世界だけでなく、実生活でも役に立つ、物事への取り組み方なのだ。このような「取り組み方」としての科学を、実際の生命科学における様々な問題をたたき台にして、体験してもらいたい。実際の英語での論文の解釈について英語で議論したり、チームを組んで英語で新たなアイディアを創造したり、それを誰にでもわかるようなかたちで英語で発表するスキルを身につけることを目標とする。
環境応答学
担当時間:4学期 日時は10月ごろ掲示
服田先生との講義。私の担当では、形態形成における環境の影響と、その進化における役割について、近年の研究の知見を紹介する。
生命科学特殊講義 IV
担当時間:4学期 日時は12月ごろ掲示
タイトル:Developmental buffering: Interface of environment, development and evolution.
オムニバス形式の英語での講義。私の担当の時間では、環境科学、発生生物学、進化生物学の接点、つまり変化する環境のなかでいかに生物の発生過程(卵から成体になるまでのかたちの変化のプロセス)は守られ、また進化過程の中でどのように変化してきたのかについて、最近の研究の成果を交えつつ紹介する。
グローバル理工学実習 (夏期集中、2019年度開講予定)
リーディング大学院主催の実習で、主な目的は、生命科学をこれまで専攻してこなかった学生に、生命科学の基礎的な実験方法を先端の機器を使用しながら学んでもらう。学部生、他学科、大学院生の参加も歓迎。内容は、PCRによる標的配列の増幅。例年、いろいろな学科や学年の学生が集まり、学生同士の交流の機会となっている。
リベラルアーツ科目 科学記事を読み解く (2018年度開講予定)
オムニバス形式で、環境問題、AI、健康など、様々な科学記事を読み解く。私の担当の回では、環境問題やゲノム編集についての記事を読み解く。的確な情報蒐集と発表練習、さらに自らの意見をまとめる練習の機会としてほしい。