研究内容

1. 発生緩衝の分子メカニズム

環境の影響が生物の発生の変化と進化にどのように関係しているのでしょうか。この問題は、進化生物学のなかでも中心的な問題であり続けてきました。
近年、分子生物学的研究により、さまざまなメカニズムが発見されてきましたが、野生の集団でのこれらのメカニズムの重要性は明らかになっていません。当研究室では、異なった温度環境に適応しているカタユウレイボヤ(図1)の2種での比較研究を基盤とし、得られた結果を線虫(図2)や魚類(図3)を用いて検証しています。


2. 発生緩衝における母性遺伝のしくみの解明

生物の発生過程は、発生緩衝によって環境の影響や遺伝的多様性を許容し、ほぼ一定に保たれています。発生緩衝は環境・発生・進化の相互作用を理解するうえで鍵となる概念ですが、その分子メカニズムの全貌は明らかになっていません。これまでの研究から、発生緩衝は母性遺伝することがわかっています(Sato et al. 2015)。遺伝型を等しくするハイブリッドのトランスクリプトームを比較解析することにより、この母性遺伝のしくみを解明しようとしています。


3. 可塑性と生物多様性との関係の解明

生物の可塑性は、生物学者を魅了し続けてきました。可塑性は、生物の多様性の進化とどのように関係しているのでしょうか。当研究室では、日本特有の生物種を利用し、可塑性のメカニズムと、可塑性に現れる形質に似た形質を持つ種間でゲノムやトランスクリプトーム(遺伝子発現)を比較することで、この問題を検証しようとしています(図4)。

図4図4


4.翼鰓類の研究

半索動物は、われわれ脊椎動物の起源とその進化について研究する上で非常に重要な動物です。半索動物に見られる2属のうち、腸鰓類(図5)は比較的よく研究されていますが、翼鰓類(図6)についての生物学的知見は非常に限られています。イギリスで採集されるRhabdopleura compactaを題材とし、生態や発生、また進化発生学的な研究を行っています。