大金が共著の論文がJCI Insightに掲載されました

大金が共著に入った論文が、JCI Insightに掲載されました。基本的には共同研究者の研究ですが、化合物面で寄与している研究です。

Azaria, R. D.; Correia, A. B.; Schache, K. J.; Zapata, M.; Pathmasiri, K. C.; Mohanty, V.; Nannapaneni, D. T.; Ashfeld, B. L.; Helquist, P.; Wiest, O.; Ohgane, K.; Li, Q.; Fredenburg, R. A.; Blagg, B. S. J.; Cologna, S. M.; Schultz, M. L.*; Lieberman, A. P.*
Mutant Induced Neurons and Humanized Mice Enable Identification of Niemann-Pick C1 Proteostatic Therapies.
JCI Insight 2024, 9 (20), e179525. (オープンアクセス) https://doi.org/10.1172/jci.insight.179525. 

ニーマンピック病C型は細胞内へのコレステロールの蓄積を特徴とする遺伝性難病です。リソソームのコレステロールトランスポーターであるNPC1に変異が入り、機能が失われることで起こります。私たちのグループでは、NPC1変異体がフォールディング異常を起こしていることに着目し、NPC1変異体を安定化し、フォールディングを助ける化合物 (薬理学的シャペロン)を以前に報告しています。

今回の研究では、ヒトiPS細胞から分化させた神経様細胞において、これまでに報告のあるプロテオスタシスレギュレーター (タンパク質のフォールディング過程に影響を与える化合物)の効果を検証したところ、私たちの報告した薬理学的シャペロンmo56HCが明確な効果を示したことを報告しています。

また、新しいモデルマウスについても報告しています。ニーマンピック病C型のモデルマウスはすでに存在していましたが、マウスのNPC1とヒトのNPC1は配列が異なるため (86%は同一)、ヒトで頻度の高いI1061T変異体 (1061番目のイソロイシンがスレオニンに変わった変異体)において、ヒトNPC1で見られるフォールディング異常が見られず、薬理学的シャペロン等の評価ができないという課題がありました。

この研究では、ヒトNPC1のI1061T変異体を持つモデルマウスを作出し、ニーマンピック病C型の病態を再現することを報告しています。また、論文中でin vivoでの効果は検討されていませんが、このモデルマウス由来の細胞において薬理学的シャペロンmo56HCが明確な作用を示すことを報告しています。

培養細胞レベルで効果があることと個体レベルで効果があることには大きな違いがありますが、個体レベルで薬理学的シャペロンの効果を検証できるようになったことで、今後、個体レベルで使える化合物の探索や開発が進むものと期待できます。

大金