東北大学大学院生命科学研究科・活性分子動態分野の石川稔先生・友重秀介先生らが主導した研究成果がACS Medicinal Chemistry Letters誌に掲載されました (大金が共著に入っています)。
ポリグルタミン病は特定のタンパク質中に含まれるグルタミンが連続した配列が原因となる難病で、ポリグルタミン鎖がベータシート構造に富んだオリゴマーや凝集体を形成することが病因と考えられており、ハンチントン病はその一つです。この研究は、ベータシート構造に富んだ凝集体の分解を誘導する低分子化合物について、中枢移行性などの「薬らしさ」に着目した改良を加えた研究です。ポリグルタミン病では中枢神経症状があるため、脳などの中枢神経系まで化合物が届く必要がありますが、分解誘導剤として近年盛んに研究されているPROTACやSNIPER (注釈)といった化合物は比較的サイズが大きく、中枢神経系まで届きにくいという問題がありました。この研究では、分解の目印となるタグとして、サイズが大きく中枢移行性に難のあるユビキチン化酵素リガンドではなく、疎水性タグを利用しています。水素結合性や分子量等を考慮した設計と疎水性タグの利用により、中枢移行性の比較的高い分解誘導剤を作れることを示しています。
Keigo Hirai, Hiroko Yamashita, Shusuke Tomoshige*, Yugo Mishima, Tatsuya Niwa, Kenji Ohgane, Mayumi Ishii, Kayoko Kanamitsu, Yui Ikemi, Shinsaku Nakagawa, Hideki Taguchi, Shinichi Sato, Yuichi Hashimoto, and Minoru Ishikawa* (2022) “Conversion of a PROTAC Mutant Huntingtin Degrader into Small-Molecule Hydrophobic Tags Focusing on Drug-like Properties” ACS Medicinal Chemistry Letters Article ASAP, DOI: 10.1021/acsmedchemlett.1c00500 (なお閲覧には所属機関の契約が必要です)
注釈: PROTAC / SNIPERとは、標的タンパク質に結合する化合物とユビキチンリガーゼに結合する化合物をリンカーでつないだ化合物で、標的タンパク質のユビキチン化とプロテアソームによる分解を起こす化合物の総称。