研究内容

研究テーマ

物質を構成する最も基本的な粒子とそこで働く自然法則を解明することを目的に研究を行っています。大型加速器を用いた共同実験に参加して研究を行っていますが、そこでは粒子の衝突によって起こる様々な反応を解析することで、どのような粒子が関わりどのような相互作用が働いたかを調べます。また、このような実験を行う高精度の粒子検出器の開発にも携わっています。

学生の研究テーマは個々の希望を考慮して決定しますが、現在修士課程の学生はシリコン内部飛跡検出器アップグレードのための ASIC読み出しシステムの開発に取り組んでいます。 本研究室はATLAS実験グループに属しているため、海外特にヨーロッパのグループとの連携が重要になります。 研究テーマにも依りますが、年に数回、研究のためあるいは研究報告のために海外に渡航する機会があり、 現地で活躍している研究者と交流することができます。

 

 

素粒子物理とLHC/ATLAS実験

原子核を構成する陽子や中性子はさらに小さいクォークと呼ばれる粒子が集まったものです。現在では、クォーク6種類、電子の仲間であるレプトンと呼ばれる粒子も6種類、それから力を伝えるゲージ粒子が存在することが知られており、それらの振る舞いを記述する理論は「素粒子の標準模型」と呼ばれています。

スイス・ジュネーヴのCERN研究所にある大型ハドロン加速器(LHC)は重心系エネルギー14 TeVの世界最高エネルギーの衝突型粒子加速器です。陽子と陽子を高いエネルギーで衝突させると陽子の内部構造が分解され、その構成要素であるクォークやグルーオン同士が散乱する様子が見えてきます。したがってLHCでは実質的にクォークやグルーオンを衝突させていると考えられます。

 

ATLAS実験で行う物理

クォークには強い力だけでなく電磁相互作用や弱い力も作用するため、そこから光子やW/Zボソン等の粒子も生成されることがあります。高い重心系エネルギーのおかげで未だ発見されていない非常に重い粒子が生成されることも期待されており、標準模型を超える新たな発見が期待されています。このようにATLAS実験では様々な物理過程の解析が行われており、以下の6つの物理グループがあります。
標準模型 Bの物理 トップ・クォーク
ヒッグス 超対称性 エキゾチックス
重イオン
その他にも測定器のデータから元の粒子(電子、光子、ミューオン、タウ粒子、ジェット、…)を再構成するアルゴリズムの開発や較正を行い、測定器の性能を最大限に引き出そうという研究も活発に行われています。

 

ATLASアップグレードのための検出器開発

ATLAS実験で用いられている検出器(ATLAS検出器)はLHCからくる高エネルギー陽子ビームの衝突から生じる粒子を検出し、効率よく分類するために、内部飛跡検出器、カロリメータ、ミューオンスペクトロメータという主に3つの検出バートに分かれています。最内層に位置する内部飛跡検出器はシリコン検出器と遷移輻射検出器(TRT)で構成されています。

ATLAS実験では、LHCの次期計画である輝度の向上(HL-LHC)に対応するように検出器全体をアップグレードする計画が進行中です(2023年頃を予定)。 この計画が実現すると、粒子衝突からもたらされる生成粒子密度や放射線量が現行のLHCに比べ劇的に増加することが見込まれます。 このため、ほとんどの検出器では高放射線耐性のある検出器と高レートに対応した読み出しシステムの確立を目指した開発が行われています。 河野研究室ではこの中でも最内層のシリコン飛跡検出器に重点を置きアップグレード開発を行っています。 特に、シリコンセンサーに接続されたASICで処理された信号の読み取りのためのシステム開発を重点的に行っています。 現在修士課程の学生が精力的に研究を行っています(→研究成果)。