研究室と研究テーマについて

我々は素粒子物理学を理論的側面から研究しています。 素粒子とは物質を構成する最も基本的な(小さな)要素のことです。我々は素粒子にはどういう種類があるのかを明らかにし、またそれらの運動を支配する物理法則の理解を目指します。

素 粒子の運動を記述する理論としては、「ゲージ理論」に基づいた、「素粒子標準模型」が知られています。 我々はLHC実験を始め、世界中で行われている素粒子実験の結果を用いて、標準模型の精密な検証を行います。 また我々は素粒子がビッグバン直後の初期宇宙においてどのような役割を果たし、現在の我々の宇宙の姿を決定したのか、という疑問について超対称性理論や高 次元模型、超弦理論など標準模型を超える有力な素粒子模型の可能性を調べます。

近年は素粒子理論だけでなく、重力波観測実験や原子核理論など、関連する諸分野の研究も行なっています。

以下では、研究室のメンバーが取り組んでいる研究テーマの概要を紹介します。


2016年度の研究テーマについて

1.流体力学に基づく弦理論の定式化

弦理論(および膜理論)は重力を量子化し、また素粒子間に働く相互作用の統一理論の構築において極めて重要である。現在はPoisson bracket及びNambu bracketの手法を用いて弦理論や膜理論を流体力学の観点から定式化することを試みている。

2.超対称性理論によるフレーバーおよびCP対称性の破れ

Bファクトリー実験で指摘されている、B中間子の崩壊における分岐比やCP非対称性が標準模型の予言と異なっている問題を、超対称標準模型に基づいて調べる。特にRパリティを破る効果の導入による、問題解決の可能性を探る。

3.LHC実験における余剰次元(高次元)模型の検証

我々 の時空は4次元である。しかしRandall-Sundrum模型では、 空間に湾曲した余剰次元が存在することでゲージ階層性問題が 自然に説明できる可能性を指摘している。我々はこの模型の直 接的な帰結である重力子(グラビトン)、スカラー粒子Radionおよび余剰次元をゲージ粒子が伝播する際に現れるカルーツァ・クライン粒子の、LHC実 験における探索可能性を調べている。

4.宇宙の暗黒物質起源に関する研究

近年の宇宙背景輻射の観測により、宇宙の約20%が暗黒物質であることがわかった。暗黒物質としての性質を満たす粒子は素粒子標準模型にはないため、我々は超対称性模型や5次元に拡張された標準模型に基づき、暗黒物質の正体を調べる研究を行なっている。

5.格子ゲージ理論を用いたゲージ・ヒッグス統一模型の検証

ゲージ・ヒッグス統一模型はヒッグス場の起源を5次元時空にお けるゲージ場の一成分と見なす模型である。この模型の非摂動領 域における振る舞いを格子ゲージ理論に基づき、平均場近似とモ ンテカルロ・シミュレーションを用いて調べる。

フィンスラー/河口幾何によるラグランジュ形式

一般の力学系、場の理論の作用を幾何学的な長さや面積とする新しいラグランジュ形式の定式化をリーマン幾何の拡張であるフィンスラー/河口幾何を用いて行った。特に一般相対論に適用し、重力のエネルギー・運動量カレントについて考察する。

6.不純物の入ったXXZ鎖の研究

XXZ鎖はベーテ仮設を用いて厳密に解けるスピン系であることが知られているが、本研究ではXXZ鎖の一部を変形してできた可解不純物模型を扱う。この模型は近藤模型のスピン部分を含む形になっている。物理量の温度依存性やウィルソン比を計算し、不純物効果を調べている。

7.拡張重力理論での宇宙の加速膨張機構と三大物質組成の起源の研究

近 年の観測から、現在の宇宙の加速膨張が明らかになり、その要因として暗黒エネルギーの存在が示唆されている。バリオンや暗黒物質は宇宙膨張を減速させる ため、暗黒エネルギーが加速膨張を引き起こしているが、そのためには負の圧力を持つ必要がある。本研究では、初期宇宙でのインフレーショ ンと現在の宇宙の加速膨張機構、及び現在の宇宙の三大物質組成である暗黒エネルギー・暗黒物質・バリオンの起源を特に素粒子論に基づく拡張重力理 論において統一的に解明することを目的としている。

8.重力波観測実験

重力波はアインシュタインの一般相対性理論から予言される、時空のゆがみの伝播である。この重力波観測実験に大学院生を派遣し、主に国立天文台で実験に参加している。

9.進化と認識の物理

生 物は認識に基づいて行動し、古典力学的(あるいは確率論的)法則には従わない。認識(recognition)は認知(cognition)に基づいて いる。認知は「活動に伴う外部入力の変換において不変な形式」にそった自己組織化(トポロジー化)によって生成し、蓄積される。本研究ではまず「進化」の 数学的構造を明らかにする。さらに、神経回路における認知の生成を解明する。