研究内容

我々の研究室では、量子力学、量子情報理論、量子光学の基礎に関する研究を行っています。対象とする物理系は、開放量子系と呼ばれる外部環境の中に置かれた量子系です。環境系とは、熱浴、測定装置、制御系など注目する量子系に対して様々な影響を及ぼす巨視的な系を指します。

 

量子力学の基礎/量子情報理論

外部環境の影響を受けた量子系の特徴は、その状態が時間とともに不可逆的な変化をすることです。この量子系の不可逆的な状態変化において、系が有する量子力学に特有の性質は興味深い振る舞いを示します。当研究室では、量子力学的な性質が示す様々な不思議な現象を解析的な手法を用いた理論的な研究を行っています。

量子力学と情報の概念を融合した量子情報と呼ばれる分野は、量子力学の基礎の理解に新たな視点を与えるとともに、新しい情報処理・通信技術を提供する研究分野です。我々の研究室では、開放系の量子力学の立場から量子情報の研究を行っています。特に、環境系の影響を受けた量子系の不可逆的な時間変化の中で、量子もつれやQuantum Discordと呼ばれる量子相関や、Bellの不等式の破れのような空間的な非局所性、Leggett-Garg不等式の破れのような時間領域での非局所性がどのような振る舞いを示すかということに焦点を当てて研究しています。また、量子テレポーテーションや量子デンスコーディングなどに代表される量子通信理論の研究を量子力学の基礎という視点から研究に取り組んでいます。

 

非平衡量子統計力学/量子光学の基礎理論

外部環境の影響を受けた量子系の状態の時間発展を記述する基礎方程式の導出は非常に重要な研究課題です。また、導出された基礎方程式を用いた量子系のディコヒーレンスや散逸などの解析も興味深い研究テーマです。我々の研究室では、量子系と環境系の間の相互作用の微視的な模型から注目する量子系のマスター方程式を導出し、その結果を様々な問題に応用して量子系の不可逆現象の解明に取り組んでいます。また、確率過程を用いた不可逆過程の解析にも取り組んでいます。特に、外部環境の影響を受けた量子系の不可逆的な時間発展における非Markov効果や注目する量子系内の相互作用が不可逆過程に与える影響や初期相関の問題にも注目しています。更に、開放量子系の線形応答理論や多時間相関関数の研究も行っています。これらの結果を光学系に応用し、光子の非古典性が不可逆的な時間発展の下でどのように変化していくかを調べています。