典型元素を活用した機能性材料の開発
π共役系化合物は、有機ELや有機薄膜太陽電池など有機エレクトロニクスに欠かせない重要な化合物群です。π共役系化合物の主骨格は炭素から構成されていますが、そこへ典型元素を導入することで、電子状態や光物性等をチューニングすることができます。我々のグループでは様々な典型元素を活用した新しいπ共役系化合物を合成し、その光物性や応用可能性を探っていきます。
典型元素の特徴を活かした新しい芳香族・反芳香族性
芳香族・反芳香族性の概念は、sp2混成の第二周期の元素(主に炭素や窒素)から骨格が形成された化合物(例えばベンゼン・ピロール・シクロブタジエンなど)を基に確立されてきました。しかし、最近の研究成果から芳香族性の概念は、高周期の元素や遷移金属を含む環状化合物についても成立することが明らかとなり、芳香族・反芳香族性の世界は日々広がっています。
それらの中でも我々は、特に超共役的(反)芳香族性に興味を持っています。超共役的(反)芳香族化合物の最大の特徴は骨格にsp3混成原子を有することです。つまり、環内の共役には一般的なπ共役に加え、sp3混成元素のσ*軌道を介した「超共役」を利用しています。未だに超共役的(反)芳香族性の合成例は少なく、我々は独自の分子設計で超共役的(反)芳香族化合物の合成に取り組んでいます。
14族元素低配位化学種の合成と触媒への応用
遷移金属特有と考えらえれきた反応、例えば金属-炭素結合へのアルキンやアルケンの挿入・水素分子の均等開裂・アンモニアのN-H結合開裂などが、典型元素の低配位化学種でも可能となりつつあります。今後この化学がさらに発展すれば、現在は希少なレアメタルに依存している触媒反応が、安価な典型元素でも実現できる可能性があります。そのような典型元素触媒の開発を目指し、14族元素低配位化学種の合成研究をしています。なお、本研究は2023年度JKA補助事業(競輪)にご支援賜りました。